哲学の道 No.10
 いやあ、驚きました。沢山の返信の束を今、スタッフから渡されたところです。
 全部で二十通ばかりの遠い方々からの<声>を手にして、すぐにも返信を書き込まね
ばと焦って、ワープロを起動させ、広げたところです。


 先ずは言分けからになりますが、兎に角、今は「金八」に忙殺される毎日に一人居り
ます。朝は、大体に四時か五時には起きております。それで、渡された台本を徹底的に
読み返しております。皆さんに視聴して頂く番組に仕上げるために、10回以上は読み
返すでしょうか。この脚本を書いた作家より(今回は清水有生さんですが)、その脚本
を読み返す事を自分に命令しています。
それで作家の思いを濾しだし、最良の言葉と科白に仕上げるべく、託された言葉を鍛え
直して、出演に備えております。その為、私的時間は殆ど無くしていますが、苦痛では
ありません。
 「金八」と言う番組では労苦の多い役どころを担うことになっておりますので、さし
て楽したいとも思いません。これは半端にやり過ごすことが全く出来ない仕事です。
暫くは世間を離れて、私個人で私の身体を私の為に使うことはないでしょう。
 「金八」は今までもそうですが、ひどく私を試す仕事です。日頃から「私」を鍛えて
いるか、油断なく「私」を深めているかを審問する仕事になっています。台本によって
は、すでに用意したもので演じるだけでは足りず、まるで帆船を操るように物語りの
波風を計りつつの必死の航海の日々です。
 試されてみて、自分のスキや油断をいくつも見付けては躁になったり、鬱に堕ちたり
しています。


 返信を頂いた方々の感想、批評のヨミの深さに実は驚いたのですが、このブログと
交信して下さる方の勘の良さに感心しております。御指摘の通りで驚いたのですが、
今度の「金八」は相当、哲学的です。
教室に於ける金八先生は今までと違い、情熱をあまり前面に出していませんね。彼は、
このシリーズの中で最も静かです。彼が第一話で語ったことは「大事なことは、答えで
はなく、問題なんです」。
 あれは私自身もとても気に入っている言葉です。
二話目の「人生、自分で見付けた答えだけが、答えなんですね」も。
なんか、答えを知っていて、そこに生徒を導くのでなく、問題を前にしてその問題に
「金八」と生徒が並んでたっているというのがとても大事な気がして来たのです。
 このブログで展開した哲学の術が、物語りの「金八」の演技に身に付いているか、
「問い」を前にして私も試されているのだと思います。
あのう・・・もう出発の時間なので今回はこれぐらいにします。
 ただ演技の話術としてでなく、人間を演じることの肌理(キメ)として、どれほど
哲学が私こと「てつや」の「鉄学」として身についているか。私は私を試すつもりです。
懸命の演技となるでしょうから、あまり長い交信文は送れませんが、これぐらいの
通信文ならマメに送れると思いますので、その点、御容赦下さいね。
                                てつや。